安全関連試験機器

絶縁・耐圧試験器、低抵抗計、アース導通試験機、漏れ電流計

電気は身近でありながら、使い方を間違えると声明に関わる重大な事故につながる可能性がある危険なものでもあります。そんな電気を利用した製品の安全性を確認するための機器が、安全関連試験機器です。一口に安全関連試験機器といっても、耐電圧や部分放電など、多種多様な試験をおこなうための機器があります。法令や規格を遵守するために必要な安全関連試験機器について解説しましょう。

安全関連試験機器とは?

まずは安全関連試験機器がどのようなものなのか、基礎的な内容について解説します。

電気に関する安全規格を満たしているかテストするための機器

電気を使って動作する機器は私たちの日常や仕事など、あらゆる場面で必要なものですが、電気には一歩間違えると感電が起きるなど、危険な側面もあります。

このため、電気用品の製造、輸入、販売に対しては、日本では「電気用品安全法」が定められていたり、規格が存在したりするなど、安全性をしっかりと確保することが求められているのです。

このような法律や規格を満たしているかどうかを確認するための機器が安全関連試験機器であり、さまざまな試験に対応する機器が販売されています。

国ごとに安全規格は異なる

電気に関する安全規格は、国際規格のIEC(International Electrotechnical Commission)が存在していますが、それぞれの国ではこの規格を元に国ごとの事情に合わせたものが運用されています。

たとえば情報処理装置に関しては国際規格のIEC 60950-1に対し、日本にはJIS C 6950-1が、北米にはUL/CSA60950-1が、欧州にはEN 60950-1が運用されているのです。
ほかにも計測器(IEC 61010-1)、医療医用電気機器(IEC 60601-1)、オーディオ・ビデオ、情報および通信技術機器(IEC 62368-1)に対しても各国が独自の規格を持っています。

グローバルに製品を展開するなら、さまざまな規格に対応する安全関連試験機器が必要といえるでしょう。

安全関連試験機器の種類

安全関連試験機器の種類について解説します。

耐電圧試験機器

耐電圧試験機器は、高い電圧をかけたときでも機器が壊れないことを確認するための装置です。

高い電圧をかけたときでも絶縁破壊を起こさないことを確認するため、直流および交流で通常の使用でかかる電圧の10倍~20倍といった高い電圧を印加します。

これにより感電や漏電の危険がないことを確認でき、万が一のときでも使用者が安全に利用できる機器であることを証明可能です。

絶縁抵抗測定器

絶縁抵抗測定器も耐電圧試験機器と同じく、高い電圧で絶縁破壊が起きないことを測定するための機器ですが、耐電圧試験機器が実際に高い電圧をかけるのに対し、絶縁抵抗測定器は抵抗値を測定するために必要な電圧をかけるだけである点が異なります。

絶縁は長期にわたる使用により劣化が起きるため、絶縁抵抗を定期的に測定することで経年劣化による感電や漏電を防げるでしょう。

部分放電測定試験装置

部分放電測定試験装置は、固体絶縁台中に空隙などの欠陥が生じることによる部分放電を検出するためのものです。

部分放電が生じるとそれが原因で絶縁部分が徐々に劣化します。

2016年10月には地中送電ケーブルで部分送電が発生し、それによって絶縁部分が劣化、最終的に大電流が流れて火災が発生し、東京都内の58万戸で停電が発生しました。

事故の予防はもちろん、機器の耐用年数を延ばしたりより高電圧で使ったりするためには部部放電測定試験が重要といえます。

インパルス試験器

インパルス試験器は、コイルに高電圧で幅の狭いパルス電圧を加えることで、コイルの状態を調べるための装置です。

コイルのレアーショート、絶縁不良、巻き線間違いなどを発見でき、モーターなどコイルを搭載した製品には必須の試験装置といえます。

耐電圧試験機器と同じく高電圧をかける装置ではありますが、パルス電圧であるため、耐電圧試験機器の代わりにはならない点には注意してください。

漏れ電流計

漏れ電流計は、いわゆる漏電を測定するための装置です。漏れ電流は人体に大きな影響を与えるため、漏れ電流計には微弱な電流を正確に測定することが求められます。

また、通信機器では半導体にノイズが生じる原因となるため、品質検査で漏れ伝流の測定が必要です。

一般的な電流計でも電流を測定できますが、漏れ電流計は微弱な電流を計測する必要があるため、磁界の強さとその変動から電流計に変換する点が異なります。

保護接地抵抗測定器

人が触れる金属部が、保護接地されていることを確認するための機器です。

機器の故障により金属部に電流が流れたとしても、人体の抵抗より低い抵抗で接地(アース)されていれば、人体に大きな電流が流れず、生命を守れます。

複数の機能を備えた安全関連試験機器も

安全関連試験機器のなかには、単一の測定機能だけでなく、複数の機能を備えたものがあります。

電気を使った製品には複数の測定が求められるため、必要な機能を1台で多くまかなえる装置を使えば、機器を使い分ける手間を減らせるでしょう。

また、機器数を減らすことで安全試験機器を保管・設置する場所を節約することにもつながります。

安全関連試験機器のメリット

安全関連試験機器を使うメリットを解説します。

安全・安心な製品を顧客や消費者に届けられる

電気を使う製品は、電気の扱いに詳しい方だけでなく、一般の消費者が使うこともあります。このため、誰が使っても、故障が起きたとしても感電などの事故が起こらないことは重要です。

もし自社の製品で事故が起きた場合、刑事、民事での責任はもちろん、社会的な責任が生じて信用失墜やイメージダウンといったネガティブな影響が出るでしょう。

安全関連試験機器は一般に高価ですが、性能が高い安全関連試験機器を持つことはこのような事故防止につながるのです。

法令/規格に沿った製品であることを客観的に評価できる

電気機器に関する法令や規格は、基準となる電圧や電流などの値を具体的に示しており、それらに沿った製品であることを確認するには使う電圧や電流、印可時間などを正確に設定する必要があります。

安全関連試験機器は試験に使うパラメータを細かく設定できるため、必要十分な試験をおこなうことが可能です。

また、試験の記録を残しておけば、正しく試験をおこなった製品であることを客観的に示せるでしょう。

大型液晶ディスプレイ搭載で波形表示が可能な製品も

大型液晶ディスプレイを搭載した安全関連試験機器であれば、結果の波形表示やグラフ表示が可能であり、判定や解析をグラフィカルにおこなうことができます。

さまざまな情報を一度に表示できるため各種設定がしやすく、作業効率が上がるでしょう。

タッチパネルを搭載した製品であれば、直感的な操作が可能となり、操作に慣れるまでの時間を短縮することができます。

試験結果判定の自動化が可能

安全関連試験機器のなかには試験結果の判定を自動でおこなえるものがあります。

このようなものを使えば人間が測定値を目視チェックする必要がなく、手間が減らせる上に、見逃し発生防止につながるでしょう。

また、自動で複数の試験ができる機器を使えば、設定や試験開始、終了確認の手間を減らすことができ、人間の負担を減らすことが可能です。

パソコンとの連携による便利機能も

パソコンと連携できる安全関連試験機器であれば、さらに便利な機能が利用できます。

たとえばパソコンからの複数の安全関連試験機器制御に対応したものであれば、さまざまな試験結果を一括して管理することができ、情報の統合が楽におこなえるでしょう。

また、法令や規格に沿った閾値を自動で設定し、測定結果を自動で判定、さらにはレポート作成まで自動でおこなえるものもあります。

活用事例

インパルス巻線試験機を用いたコイルの絶縁信頼性試験

コイルの評価には2つの試験が必要です。一つはコイルの巻線の被覆が絶縁されているかを確認するレイヤショート試験でインパルス巻線試験機を使用して行います。もう一つは、微小な空隙状欠陥がないかを確認する部分放電試験で、コロナ放電を観測することで確認することが多いです。これらを1台でできるインパルス巻線試験機があり、狭帯域アンテナを使用し、部分放電が起きる高周波信号を検出することで試験が可能となっています。試験環境に左右されず、取り扱いが簡単なため、生産ラインへの導入も可能で自動化も図れます。

絶縁保護具の自主検査

絶縁用保護具は労働安全衛生法の規定により6か月に1回耐圧試験を実施しなければなりません。外部機関に依頼することが多いですが、輸送費や代替品の用意など手間とコストがかかります。試験手順をメモリに記憶し、内蔵の試験機能を様々なシーケンスで実行可能な耐電圧試験器を使用すれば自社で試験が可能です。また、JIS T 8010等に準拠した自主試験をいつでもどこでも一つ3分で完了できる一体型になった、電気用安全帽(ヘルメット)対応モデルと電気用ゴム手袋・電気用安全帽・電気用長靴の3種に対応したモデルも用意されています。

航空機搭載設備の400Hz耐電圧試験

航空機に搭載されている電源の周波数(400/800Hz)は、地上の商用電源(50/60Hz)とは異なります。そのため、これらの機器のAC耐電圧試験を行う場合、実際の稼働周波数で行う必要があるのです。その際は周波数400Hz(800Hz)出力を選択できるオプションの試験器があるため、問題なく対応できます。

質問集

様々な安全試験を1台でできる試験器はありますか?

安全試験の種類には、耐電圧試験、絶縁抵抗試験、アース導通試験、漏れ電流試験(保護導体電流試験、接触電流試験、患者漏れ電流試験)、部分放電試験がありますが、それぞれに対応した試験器だけでなく1台で無駄なく様々な安全試験に対応したマルチユースの試験器もあります。品質保証試験や研究開発設備、規格認証機関の生産ライン・試験の設備に適しています。

耐電圧試験時の注意事項は何ですか?

試験器を定期的に校正したうえで仕様範囲内で正しく使用し、取扱説明書の使用上の注意を熟読して操作することが必要です。
1.感電防止の電気作業用のゴム手袋を装着する、2.試験器を大地に接地する、3.高圧出力時は絶対にテストリードには触れないの3つは特に大切です。
インターロック機能の付いた試験器を使用する場合は、インターロック機能を極力使うようにしてください。この機能が働いていれば、パネルのSTOPスイッチ、またはリモートからのSTOP信号でもロックを解除できないため事故が起きにくくなります。

1台で複数個所の安全試験ができますか?

高電圧スキャナというものがあり、これを使用することで複数個所の試験ができます。本体に内蔵している製品や、後付けできるように別筐体で提供しているものもあります。

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