データ通信測定器

データ通信測定器

電子機器間の通信には規格があります。そのなかにはUSBのように一般的なものばかりでなく、CANのように特定の分野でしか使われないものもあり、解析が容易でないこともあるでしょう。また、設計した機器が通信規格に従って動作するかどうか確認するのには手間がかかります。このような悩みを解決するための機器がデータ通信測定器です。うまく活用することで、目に見えない電子機器間の通信の解析に役立ちます。本ページではデータ通信測定器とは何か、種類、メリット、活用事例、よくある質問などわかりやすくご紹介していますので製品の選定にお役立てください。

データ通信測定器とは

まずはデータ通信測定器がどのようなものなのかを解説します。

特定のプロトコルによる通信内容を測定、解析、評価するためのもの

電子機器や自動車のなかには、機器間で通信をおこなうものがあります。PCでいえば、本体とキーボード/マウス、本体と無線LANルーター、本体とディスプレイなどがその代表です。

それぞれの機器はそれぞれが必要とする速度や伝送距離などにあわせて通信のやりかたが決まっており、これをプロトコルと呼んでいます。

特定のプロトコルで通信する機器はそのルールに従って通信しなくてはなりません。そして、設計した機器がプロトコルに従って通信しているか、あるいはなぜうまく通信できないかを確認するためにデータ通信測定器が使われます。

通信内容を解析できるものや扱いやすいプロトコルに変換するものが存在

データ通信測定器には大きく分けて2種類の機器が存在します。

1つ目は、特定のプロトコルに従って送られてきた通信内容を表示したり解析したりするものです。高機能なものになると、そのプロトコルに従って通信できているかどうかを自動的にテストできるものもあります。

通常、プロトコルの試験にはさまざまな条件でのテストが必要ですが、これを自動的におこなうことで人がおこなう作業を大幅に削減できるでしょう。

2つ目は、あるプロトコルをより扱いやすいプロトコルに変換するためのものです。

自動車や産業向けの通信プロトコルには、要求される仕様の特殊さから、あまり一般的でないものが使われることがあります。これをUSBなどのPCなどで一般的に使われるプロトコルに変換することで、評価や解析をより手軽におこなえるようになるでしょう。

これら2つの機能を両方兼ね備えている機器もあります。

データ通信測定器の種類

さまざまな通信プロトコルに対応したデータ通信測定器が販売されていますが、よく扱われる通信プロトコルについて解説します。

RS-232C

RS-232Cは電子機器間でシリアル通信をおこなうための規格です。シリアル通信とは少ない接続線で通信できる通信方式であり、機器間の接続コストを減らせます。

RS-232Cは一昔前のPCには必ず搭載されていた規格で、PC同士やモデムなどの接続に使われていました。

PC向けでは現在、同じくシリアル通信の規格であるUSBに取って代わられていますが、産業用などでは規格のシンプルさから今でもRS-232Cが使われることがあります。

USB

USBとはUniversal Serial Busの略で、その名の通りシリアル通信規格の1種です。スマートフォンの接続や充電に使われていることから、世の中の多くの人に知られている規格といえるでしょう。

その歴史は意外と古く、USB1.0と呼ばれる最初の規格は1996年に登場しました。当時は最高速度が12Mbpsと遅く、キーボードやマウス、プリンタ、USBメモリなど、それほど通信速度を要求しない機器の接続がメインターゲットでした。

その後USB2.0で480Mbps、USB3.0で5Gbps、USB3.1で10Gbpsまで最高通信速度が向上し、USB4では40Gbpsの通信が可能です。

USB規格タイプ 最高通信速度
USB1.0 12Mbps
USB2.0 480Mbps
USB3.0 5Gbps
USB3.1 10Gbps
USB4.0 40Gbps

さらに、データ通信ではなく電力供給を目的としたUSB PD(Power Delivery)が登場するなど、今後もUSBは広がりを見せるでしょう。

USBはPCで扱いやすいため、データ通信測定器がプロトコル変換をする場合USBが使われることが多いです。

CAN/CAN FD

CANはController Area Networkの略で、主に自動車内の電子機器間の通信に使われるプロトコルです。

特徴は1本の電線に多数の機器を接続し、かつ複数の機器がマスターとなって通信を開始できる点にあります。これにより車のなかの電線(ハーネス)の本数を減らせるほか、1つの情報を複数の電子機器で共有でき、拡張性が高くなるというメリットがあります。

さらに、データ通信に差動電圧方式を採用することによりノイズ耐性が高く、エラー検出・通知・リカバリー機構を備えているため、誤作動が許されない自動車向けにおいて信頼性の高い通信規格といえるでしょう。

CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)は、CANのプロトコルを拡張し、通信速度を高速化した規格です。

自動車に搭載される電子機器の数は増え続けており、CANでは通信速度および容量が不足してきています。そこで、CAN FDでは通信速度を上げつつ、CANを扱ったことがある技術者であれば理解しやすいプロトコルを維持することにより、今後の自動車内ネットワークを担う存在を目指しているのです。

100/1000BASE-T1

100BASE-T1や1000BASE-T1は、主に自動車向けに使われるイーサネットの通信規格です。

それぞれ最高で100Mbps/1000Mbpsでの通信が可能であり、CANよりも大容量のデータ通信ができます。

また、高度なデータ符号化処理を用いることでノイズを抑え、規格上はシールドなしで最大15mの通信が可能です。

今後普及するであろう自動運転車では画像やレーダー、LiDARからの大容量データを処理する必要があり、これらの規格が通信に使われたり、さらに高速な10Gbpsの通信速度を持つ規格が検討されたりしています。

ZigBee

ZigBeeはIoT(Internet of Things)機器に使われる無線通信規格です。

同じ無線通信規格のBluetoothに比べ、スリープ時の待機電力が小さく復帰が速い、同時接続台数が多い(最大65,536台)といった特徴があります。

また、メッシュ構造やバケツリレー方式による複数台同時接続が可能なため、大量のIoT機器を展開するのに向いた規格といえるでしょう。

ただし、最高通信速度は250kbpsと画像や音声といった容量の大きいデータの通信をおこなう場合は用途が限られます。

PROFIBUS

PROFIBUSはファクトリーオートメーション(FA)やプロセスオートメーション(PA)に使われる通信規格で、ネットワーク上に複数のマスターを接続するトークンパッシング方式と、マスター/スレーブ通信方式を併用しているのが特徴です。

産業用に作られた規格であることから、ネットワーク上に接続されている機器を接続したり切り離したりしてもほかの機器の通信に影響が出ないように設計されています。

また、広大な工場でも利用可能なよう、リピーターを使えば最大12kmまで通信可能です。

データ通信測定器のメリット

波形解析装置(アナライザ)を利用するメリットを解説します。

特殊なプロトコルを人が目視できる表示やPCなどで扱いやすいプロトコルに変換できる

世の中で使われているプロトコルのなかには一般的でないものが多く存在します。そのようなプロトコルで通信をおこなう機器を設計したり、あるいは製造した機器に通信不具合が起きたりした場合、解析にはそのプロトコルに対応した特別な測定器が必要になるでしょう。

プロトコルの変換をおこなえるデータ通信測定器のなかには内蔵ディスプレイを備え、人が目に見える形に通信内容を変換できるものがあります。これにより容易に通信内容の確認が可能です。

また、CANなどの特殊なプロトコルを、USBなどの一般的なプロトコルに変換するものもあります。一般的なプロトコルに変換することで普通のPCでも通信の解析が可能になり、不具合の解析に特別な測定器が必要ありません。

コンプライアンステストを自動実行できる

USBなどの通信規格の場合、その通信規格に対応していることを製品に表示するためにはコンプライアンステストと呼ばれる試験に合格する必要があります。

コンプライアンステストではアイパターンでジッタ、ノイズ、周波数を測定するなどさまざまな試験が求められ、かつ測定条件も色々と変えながら試験をおこなわなくてはなりません。

このような試験を人の手でおこなうのは工数的に大変ですが、データ通信測定器のなかには自動でコンプライアンステストを実行できるものがあります。

コンプライアンステストに不合格であった場合のために、測定した波形が保存されており、修正のためのフィードバックに役立つでしょう。

活用事例

電波の見える化で無線環境を快適化

専用解析ソフトrと目に見えないWi-Fi電波を測るUSBタイプのスペクトラムアナライザを組み合わせれば、工場やオフィス内の電波状況を解析できるだけでなく、ネットワーク環境の改善にも貢献します。ラインナップは幅広く、PCとつなぐだけの直感的操作が可能なUSBタイプからiOSやAndroidで測定可能なもの、Wi-Fiトラフィックを可視化するパケットアナライザーツールまであります。また、さまざまなソリューションを1つにしたバンドル版も揃っています。

高速CAN、CAN FD、LINインターフェイスを1つのデバイスでサポート

CAN 対応 USB インターフェースなら、1つのデバイスで高速CAN、CAN FD、LINインターフェイスをサポート可能です。製品ラインナップに応じて3タイプに設定でき、最大2チャンネルをISO準拠するCAN FD、ISO非準拠のCAN FD、高速CANに分けられます。車載(Automotive)バージョンは、2チャンネルから1チャンネルをLINに設定できるほか、電気的絶縁機能つきで費用対効果が高く、汎用性に優れています。

オシロスコープでシリアル通信解析を

シリアル・トリガ/解析アプリケーションを使用すれば、オシロスコープでデータ・アドレスといった、シリアル・バスを測定するために欠かせないすべての要素にトリガをかけることができます。I2C、CAN、SPI、CAN FD、FlexRay、100BASE-T1、LIN、SENT、RS-232/422/485/UART、USB 2.0(LS、FS、HS)、SpaceWire、I3C、Ethernet、SPMI、8B/10B、MIL-STD-1553、NRZ、ARINC 429、LJ、I2S、RJ、PSI5、DPHY、TDMの自動デコード/解析が可能です。

質問集

安価なRS-232Cモニタはありませんか

6万円台で導入できるRS-232Cモニタがあります。
高速通信対応:最大115.2kbpsの通信速度に対応
時間計測機能:1ミリ秒分解能のアイドルタイム計測が可能
大容量データ対応:大容量データを分割して自動保存可能
パフォーマンス測定:1秒あたりのデータ通信量を測定
使いやすい操作性:Windows(標準)インターフェースに合わせたソフトウェア設計

GPSデータをCANで出力できませんか

スタンドアロンでGPSデータをCANで出力するモジュールがあります。3D慣性データ(ジャイロスコープ&加速度計を介して)・GNSS位置を生成することで設定可能なCANバスフレームを介し、出力できます。

電源のない現場でプロトコルの確認をしたい

現場でのHART、Foundationフィールドバス、PROFIBUS PAなどの主要なプロセスオートメーションプロトコルに対応したハンドヘルタイプの診断ツールがあります。内蔵されたバッテリーとBluetooth通信によりスマートフォンやタブレットのようにハンドヘル機器として使用でき、過酷な環境にも対応しています。

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