2022年9月2日付より、日本国内でも6GHz帯の電波(5925~6425MHz/500MHz幅)の無線LANが利用可能になりました。あたらしい無線LAN規格は 「WiFi 6E」「IEEE802.11ax」と呼ばれ、無線LANルーター、スマートフォン、PCなどに使われていくことが予想されます。ワイヤレスコネクティビティテストセットは、製品の開発から製造ラインまで「WiFi 6E」においても幅広く使用可能な製品となっています。
無線通信・移動体通信測定器
無線通信や移動体通信は、受信部と送信部、伝送路の3つの部分で構成されています。各部分において通信が正常に行われているかを測定するものが、無線通信・移動体通信測定器です。無線通信・移動体通信測定器とは何か、測定する内容や仕組みや種類、メリット、活用事例、よくある質問などについて紹介します。
また、無線通信・移動体通信測定器を利用することで、どのようなメリットが得られるのかについてもまとめました。無線通信や移動体通信において通信状況を測定することは電波法にも定められた通信者の義務です。正しく通信状況を測定するためにも、無線通信・移動体通信測定器についての理解を深めておきましょう。
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無線通信・移動体通信測定器とは
無線通信・移動体通信測定器とは、無線通信の通信状況や移動体通信の通信状況を測定する機器のことです。いずれも無線を用いた通信のため、測定する機器自体に電波を感知するアンテナなどが搭載されていることが一般的です。
無線通信・移動体通信とは
無線通信とは、電波を用いた通信全体を指す言葉です。現在では、長波や中波、短波以外にも、超短波や極超短波、ミリ波、マイクロ波などの波長が短いものも通信に用いられています。
無線通信は、用途によって次の3つに分けられます。
- 固定通信
- 移動体通信
- 衛星通信
無線通信の種類1:固定通信
固定通信とは固定した地点間の通信です。例えば、自宅のテレビは、テレビ局や電波塔、家庭用アンテナなどの固定した地点間で電波が移動しているため、固定通信の1つといえます。
無線通信の種類2:移動体通信
移動体通信とは、送信側か受信側、あるいは送信・受信の双方が移動しながら通信を行うことを指します。例えば、携帯電話やモバイルルーターなどは、移動しつつ電話やインターネットなどの通信を利用できるため移動体通信です。
なお、移動体通信の歴史は古く、船舶や航空機などで用いられてきました。また、電車やバスなどの公共交通機関や警察といった、人々の安全に関わる重要な場所・職種においても、移動体通信は用いられています。
移動体通信では、長距離通信では短波、数十kmまでの中距離は超短波か極超短波などが用いられることが一般的です。携帯電話では極超短波が使用されていますが、利用者の増加や高速通信への対応に伴い、より高い周波数帯が使用されるようになると考えられています。
無線通信の種類3:衛星通信
衛星通信とは、人工衛星などの宇宙局を介した通信のことです。通信に用いる人工衛星は基本的には静止衛星ですが、地球の自転により通信局や送信機・受信機との距離が変わるため、移動体通信の1つとも見られます。
衛星通信は広範囲をカバーできるため、海外や離島との通信にも用いられています。また、大規模災害により通信局を利用できなくなった地域との通信にも、衛星通信が用いられることが多いです。
衛星通信ではマイクロ波に分類される1~10GHzの周波数帯が適しているといわれています。しかし、近年は伝送容量の増大に対応するために10GHz以上の周波数帯も用いられています。
無線通信・移動体通信測定器で測定する対象
無線通信・移動体通信は、受信部と送信部、伝送路の3つの部分で構成されています。無線通信・移動体通信測定器では、受信部と送信部、伝送路が別個に測定され、適切に通信が行われているか、他の通信を妨害していないか確認します。
なお、電波法で測定が義務付けられているのは、送信と受信に関する特定の部分です。しかし、通信機器が正常に作動しているかどうかを知るためには、指定されていない部分や伝送路の測定も欠かせません。適切な無線通信・移動体通信測定器を用い、通信状態を測定しましょう。
無線通信・移動体通信測定器の種類
無線通信・移動体通信のどの部分を測定するかによって、測定器は異なります。受信部、送信部、伝送路に分けて、無線通信・移動体通信の測定器を紹介します。
受信部
受信部では、主に受信感度や妨害耐力について測定をします。測定には次の機器を用いることがあります。
- 信号発生器
- 誤り率測定器
信号発生器とは、信号波形を発生する測定器です。アナログ・デジタルに関わらず、信号源に対して信号発生器という呼称を用います。例えば、デジタル無線で使われるデジタル信号発生器や、オーディオやテレビの測定に用いられる映像信号発生器などがあります。
誤り率測定器は、主にビットエラーを測定する機器です。送信部と受信部からなり、実回線に近い擬似ランダム信号を送信し、同一機器内で被測定信号の誤り率を表示します。システムの保守だけでなく、開発や製造の際にも用いることがあります。
送信部
送信部では、主に電力や周波数、変調について測定します。測定には次の機器を用いることがあります。
- パワーメータ
- 周波数カウンタ
- スペクトラムアナライザ
- シグナルアナライザ
周波数カウンタとは、交流信号の周波数を計測する機器です。ダイレクトカウント方式とレシプロカル方式の2つの方式があり、それぞれ測定しやすい周波数帯があるため、特徴を理解して使い分ける必要があります。
ダイレクトカウント方式では、ゲート期間内の周期をそのまま計測して周波数として表示します。単純な回路で構成できますが、周波数が低いときは測定時間が長くなるので不便を感じるでしょう。
一方、レシプロカル方式は入力信号の周期を測定し、逆数から周波数を求める方式です。回路は複雑になりますが、低周波数でも高速測定が可能で、計測対象が多いときなどにも適しています。
スペクトラムアナライザとは、高周波信号に含まれる周波数の成分分布を測定する機器です。オシロスコープでは信号の波形しか計測できませんが、スペクトラムアナライザでは周波数帯域の確認が可能なため、無線通信の信号測定に用いられることが多いです。また、シグナルアナライザはスペクトラムアナライザの一種で、変調信号の解析に用います。
伝送路
電界強度測定器とは、アンテナと比較信号発生器、受信機、出力計を組み合わせた機器です。さまざまな波長帯の電界強度を測定します。一方、アンテナは電波を送受信する装置のことですが、信号追跡や電界強度測定にも用いられます。
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無線通信・移動体通信測定器のメリット
無線通信・移動体通信の測定器を用いることには、次のメリットがあります。
- 適切な通信状況か確認できる
- 他の通信者を妨害しない通信が可能になる
- 電波法を遵守できる
無線通信・移動体通信では、基本的には常時通信を行います。切れ目のない送受信を行うことで、利用者の安全確保や利便性の向上に役立ちますが、通信自体は目に見えるものではないため、歪みが生じているかを的確に判断することは困難です。
定期的に測定器を用いて無線通信・移動体通信の通信状況を確認することで、適切な通信が実現できているかを把握しやすくなります。異なる周波数帯に浸食するなどの他の通信者を妨害する状況も、早めに察知して適正な通信状態に戻すことが可能になるでしょう。
また、無線通信・移動体通信における送信状況を測定することは、電波法を遵守する行為です。電波法では次の項目の測定が定められています。
- 空中線電力偏差
- 周波数偏差
- 占有周波数帯幅
- 隣接チャネル漏洩電力比
- スプリアス発射強度
- 副次発射
なお、このうち副次発射は受信部に関わる項目ですが、その他はすべて送信部に関わる項目です。法を遵守した通信を実施するためにも、測定器を用いて各項目を調べておきましょう。
活用事例
- ワイヤレスコネクティビティテストセットでWiFi 6Eの評価2
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- 5G機器の総合試験に対応できるアンテナプローブ
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測定器につなぐことで近傍界での無線装置や基地局、スマートフォンといった幅広い5G機器の総合試験に対応できます。周波数は20~43.5GHzと広帯域をカバーし、わずか20gと軽量かつ極小で、取り回しも良い製品となっています。特長としては、チャンバーレス測定を実現、ミリ波5G無線装置等の近傍界における総合試験に対応、空中線測定で同軸ケーブル並みのフラットネス性能を実現などがあります。
- ミリ波対応 電波暗箱
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チップセット、5G NR対応端末、デバイスなどの簡易的なOTA試験(プロトコル機能、スループット等)に最も適している電波暗箱です。軽量、小型、安価な国産の製品です。対応周波数は700MHz~30GHzでsub-6、mmWの評価に利用可能で、アンカーバンドの引き込みもできます。
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質問集
- 無線LANテスタのデモ機を借りたいのですが、ありますか?
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無線LANテスタの デモ機 貸し出し サービスがあります。無線LAN機器を完成品状態、実動作状態で簡単にテストします。Webで予約完了、さらに宅配便を利用するためお手軽です。また充実のサポートで機器設定や測定方法も安心です。
- 同軸アダプタのセット販売はありますか?
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各種、測定用アダプタのオスやメスなど、専用ハードケース付き10個のセットを販売しています。セットには4種類あり、
➀SMA-N セット
②3.5mm-2.4mm セット
③2.92mm-2.4mm セット
④2.92mm-1.85mm セット
がそれぞれあります。
- 無線関連の認証サービスはありますか?
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製品の多種多様な動作検証・評価及びフィールドテスト、無線(Wi-fi、Bluetooth、5G、LTE)機器などを中心とする海外製品の試験及び認証のサービスを提供する会社があります。第三者動作・検証サービス、ロゴ認証支援サービス、各国向け認証サービスに対応しています。
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