発振器・信号発生器は、無線機や受信機の試験用信号源として使用されます。身近なところでは、TVやラジオ、カーナビなどの放送に関する機器や装置の研究開発、設計、検査、保守などでテスト用信号として用いられています。受信感度、隣接チャネル選択度、相互変調、スプリアス受信等を測定するために使用され、周波数・電力・変調の設定ができるようになっています。正式名称はSSG(Standard Signal Generator)で、略してSGと呼ばれることが多いです。使用目的により周波数範囲、確度・精度、変調の種類が求められるため、様々な装置が用意されています。
発振器・信号発生器
発振器や信号発生器はその名の通り、電気信号を発生するための装置です。電子機器や電子回路の検証に用いられるこの機器は複雑な信号を生成することもでき、研究開発で広く用いられています。この記事では発振器や信号発生器の種類、用途、メリットなどについて解説しますので、機器購入の参考にしてください。
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発振器・信号発生器とは
発振器・信号発生器とはどのようなものなのか解説します。
任意の電気波形を出力するもの
発振器や信号発生器は、任意の電気波形を出力するためのものです。
一般的には発振器というと正弦波やパルス波形を一定の周波数で連続して出力し続けるのに対し、信号発生器は周波数や振幅を変化させられるものを指します。
発振器・信号発生器の用途
発振器や信号発声器は主に、電子回路のテストや回路の動作確認で使われます。電子回路が仕様通りに動作するか確認するため、任意の波形を電子回路に入力する必要があるのですが、その際に発振器や信号発生器が用いられるのです。
特にファンクションジェネレータや任意波形発生器の場合は信号を自由に変化させられるため、さまざまな用途に使用できます。
ファンクションジェネレータの原理
ファンクションジェネレータは、登場した当初はアナログ回路で構成されていました。しかしながら現在ではほとんどがDDS(Direct Digital Synthesizer)と呼ばれるデジタル方式です。
DDSでは加算器とラッチでアキュムレータを構成し、その出力を波形ROMに入力します。波形ROMは入力されたデータをアドレスとして利用し、格納された波形を出力D/Aコンバータに入力、そして出力されたアナログ波形からローパスフィルターでクロック成分を取り除くときれいな波形が得られるという仕組みです。
波形ROMは書き換え可能なRAMにすることもでき、これにより発生させる波形を後から自由に変化させることが可能になります。
任意波形発生器の原理
ファンクションジェネレータも一種の任意波形発生器といえますが、一般的に任意波形発生器といえばAWG方式のものを指します。
AWGはArbitrary Waveform Generatorの略で、ARBとも呼ばれます。DDSが固定のサンプリングレートしか使えないのに対し、AWGは可変なのが特徴です。また、波形の形状も任意に変えられるなど、より応用範囲が広いものとなっています。
発振器・信号発生器の種類
発振器及び信号発生器の種類について解説します。
発振器
発振器とは、一定の周波数を持つ正弦波や矩形波を生成するためのものです。できることが少ない分安価なのが特徴で、大量に導入する必要がある生産ラインや学校教育などで用いられています。
ただ、最近では後述のファンクションジェネレータが低価格化しており、発振器として販売される製品は少なくなっているのが現状です。
掃引信号発生器
掃引信号発生器は、設定した範囲で出力波形の周波数や振れ幅を連続的に変化することができるものです。その特徴を活かし、高周波デバイスなどの周波数特性を測定するのに用いられます。
こちらもファンクションジェネレータの低価格化により、市場で見かけることが少なくなりました。
雑音発生器
上の2つがきれいな信号を出力するのに対し、雑音発生器はその名の通りランダムな信号を生成するのが特徴です。ホワイトノイズ・ピンクノイズ・バンドノイズなど、さまざまな種類の雑音を生成できます。
用途としてはたとえばEMI(Electro Magnetic Interference:電磁妨害)のテストやDVD/BDなどでデータ転送試験などが挙げられ、部屋の音響測定に用いられることもあるなど、実世界を模したテストに欠かせない装置です。
標準信号発生器
標準信号発生器とは、標準器によって校正された信号を出力する装置です。主に無線通信機器のテスト信号を生成するのに使われます。
たとえばラジオやトランシーバーといった受信機を評価する際に信号を発生させるのに用いられ、信号強度を変えるなどして受信特性の評価をおこなうことが可能です。
パルス信号発生器
パルス信号発生器は、パルスと呼ばれる急峻な立ち上り/立ち下がり波形を持つ信号を生成するための装置です。パルス信号は医療用のペースメーカーや自動車のエンジンのタイミング制御などに利用されており、パルス信号発生器はこれらの評価に用いられます。
また、半導体レーザーの電源としてもパルス発生器は必要です。
ファンクションジェネレータ
ファンクションジェネレータは正弦波、パルス波、ランプ波、ノイズ波など、任意の波形を発生させることができる装置です。
これ1台でこれまでに説明してきたさまざまな信号発生器の機能を持つものもあり、特に電子機器のテストでよく使われます。
任意波形発生器
ファンクションジェネレータでも任意の波形が生成できますが、一般的に「任意波形発生器」はファンクションジェネレータよりも複雑な波形を生成できるものを指します。
出力波形をより正確に再現でき、より厳密な波形制御が求められる電子テストで用いられるのが特徴です。
その分価格はファンクションジェネレータより高価な傾向にあります。
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発振器・信号発生器のメリット
発振器・信号発生器を使うメリットを解説します。
実物と接続せず部品単位で検証がおこなえる
発振器や信号発生器を使うと、実物と接続することなく部品単位での検証が可能になります。
たとえば自動車のエンジン制御用ECUの場合、本来はエンジンと接続しないと動作の検証がおこなえません。エンジンと接続した検証をおこなうには、エンジンを燃焼させることができるなど、それなりの場所が必要ですし、準備のための手間もかかります。
あらかじめエンジンが出力する信号を測定し、それを模した信号を信号発生器で再現し、ECUに入力すればエンジンそのものを用意する必要がなく、それほど大掛かりな実験室でなくても検証が可能です。
仕様の上限/下限のテストが容易におこなえる
電子機器などを評価する際には、仕様として設定された上限と下限で回路が正しく動作するか検証する必要がありますが、実使用環境においてこのようなケースが頻出するとは限りません。また、上限や下限ぴったりの入力信号を得るのが難しいこともあります。
そんなときでも発振器や信号発生器を使えば、上限/下限の信号を容易に作り出せ、製品が仕様に沿って作られているかを容易に検証可能です。
レアケースの検証が簡単におこなえる
上限/下限以外にも現実ではなかなか発生しない入力が存在することがあります。たとえば不具合解析をおこなう場合に、不具合が起こった状況をそのまま再現するのが容易ではない製品もあるでしょう。
発振器・信号発生器を使えば任意の入力を狙い撃ちでき、検証期間の短縮につなげることが可能です。
また、わざと正常でない信号を入力することで、異常事態が起こった場合の検証をおこなえます。特に高度な安全性が求められる航空機や宇宙産業、自動運転車の開発ではこのような「もしも」を想定した検証が欠かせず、発振器や信号発生器が活躍する分野の1つです。
任意波形編集ツールが提供されているものも
複雑な信号の生成にはプログラミングが必要なものもありますが、最近では任意波形編集ツールを提供し、誰でも簡単に再現した波形を作り出せる機器があります。作成した波形は保存でき、将来必要になったときに再利用することが可能です。
また、大型のタッチスクリーンを備える製品であれば、操作も快適におこなえます。USBやネットワーク経由で制御できるものを使えば、PCと連携してより高度なことがおこなえるでしょう。
複数機器を同期させて多チャンネル波形生成できるものも
1台の発振器・信号発生器で生成できる信号数は限られていますが、複数台の発振器を同期させ、多チャンネルの波形生成をおこなえる装置もあります。
そのような装置を使えば、複数の信号が絡み合う複雑な状況を再現することが可能です。
活用事例
- 標準信号発生器として活用
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- 任意波形発生器(AWG:Arbitrary Waveform Generator)として活用
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PCなどを使用し、波形生成ソフトウェアやツールで作成したユーザー設定の出力波形データのことを、任意波形といいます。通常の波形発生器では正弦波、方形波、三角波、パルス波など決まった波形しか出力できないのに対して、任意波形発生器ではユーザが設定したい波形を生成、出力可能です。実際に発生した不具合がある波形が原因だった場合、その波形をデジタル・オシロスコープで観測、保存し任意波形発生器に転送、メモリに保存、出力することで対策が可能になります。
- スペクトラムアナライザなど周波数解析装置と併用
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研究開発などで多く利用されているのは、スペクトラムアナライザなどで測定し評価する方法です。まずRF(Radio Frequency)信号発生器より出力された信号を基準信号として回路・機器等へ入力します。それを受け回路・機器等から出力される信号を測定するというわけです。なお、RF信号発生器の出力する信号は、出力レベル・周波数ともに高精度のものが要求されるケースが多くなっています。アプリケーションとしては、アンプ・フィルタなどの評価、RFケーブルのケーブルロスの測定などで活用されています。
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質問集
- GNSSに対応した信号発生器はありますか?
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信号発生器には、GNSS(Global Navigation Satellite System)の疑似信号を発生するものがあります。アメリカのGPS、日本のQZSS、IMESやロシアのGLONASSなどを標準搭載し、中国のBeiDouもオプションで搭載できます。GPS、QZSS、IMES、GLONASSやBeiDouの疑似信号から、2種類の信号の同時出力ができます。
- シーケンスをプログラムできますか?
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内部メモリをもったシーケンス機能付きの信号発生器があるため、これを使用することで可能になります。複数台の同期シーケンスが不可だったり、組が違うシーケンスの連続出力では波形が途切れたりするなど制限がある場合があります。
- フィールド(現場)で採取した実波形が出力できますか?
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任意波形信号発生器を使用することでできます。装置に付属(またはオプション)している任意波形作成ソフトウエアを使用すれば、レコーダやオシロスコープなどに記録した波形のテキストファイルを読み込んだりすることにより再生(出力)が可能です。
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