自動車用試験機

自動車用試験機

自動車用試験機とは、自動車の製造に必要な試験を行う装置のことです。性能や駆動性を確かめるものと、安全性や環境への影響を調べるものに大別できます。自動車は便利ですが、操作性に問題があると人命にかかわる可能性があります。人々の安全と利便性を守るためにも、自動車用試験機が必要です。

自動車用試験機とは何か、また種類やメリット、事例、よくある質問なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

自動車用試験機とは

自動車用試験機とは、自動車製造の過程において必要な試験を行う装置のことです。自動車は今やなくてはならない存在ですが、世界中で事故を引き起こしているのも事実です。また、排気ガスなどが環境汚染や地球温暖化につながっていること、廃車にした部材の再利用が技術面・コスト面で難しいことなども問題となっています。

自動車用試験機は、自動車を安心・安全に使うために必要な試験を行うための装置です。自動車はパーツや機能が多く含まれているため、試験の種類も多く、それに応じて試験機の種類も多くなっています。

また、試験機の種類は今後も増えると考えられています。地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素を排出する化石燃料の使用が規制されるケースもあり、それとともに自動車の燃料もガソリンから電気へとシフトしてきました。

HEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)の種類も増え、新しい技術の開発も進んでいます。新しい技術の開発には、安全性や環境性を確認する試験が欠かせません。自動車用試験機の種類が増えるだけでなく、重要性もさらに高まっているといえるでしょう。

自動車用試験機の種類

自動車用試験機は、次の3つの種類に大別できます。

それぞれの種類について説明します。

駆動系自動車用試験機

自動車を製造するにあたって、まず調べなくてはいけないことは性能です。正しい利用により意図したとおりに動くのか、また、耐久性や信頼性は十分なのかについて知っておくことで、安全性を客観的に判断できるようになります。

機能性について調べる試験は「駆動系自動車用試験」、試験を実施する試験機は「駆動系自動車用試験機」です。駆動系自動車用試験機に分類される代表的な試験機を紹介します。

トランスミッションの効率測定器

駆動系自動車用試験機には、自動車全体の性能を調べるものと、特定の部品や機能に注目して試験を行うものがあります。トランスミッション(変速機)の効率測定器は、トランスミッションだけに注目した試験を行うための装置です。主な試験内容は以下のとおりです。

  • トランスミッションの動力伝達要求に対する追従性
  • 動力伝達の効率性
  • エンジンに過負荷をかけたときの耐久性

エンジンダイナモメータ

エンジンダイナモメータとは、エンジン単体の試験を行う駆動系試験機です。次の試験において利用されます。

  • エンジンに負荷を発生させ、反力からトルクなどを計測する
  • エンジンの出力軸のねじれからトルクを計測する
  • 燃焼効率を評価する

シャーシダイナモメータ

シャーシ全体においては、シャーシダイナモメータを用いて試験を実施します。主な試験内容は以下のとおりです。

  • 路上走行を室内で再現し、部品の耐久性を調べる
  • 走行時の抵抗を調べる
  • 特定の走行条件で生じる排ガスの特性・浄化率を測定する

EV/HEV向け試験機

エネルギー源がガソリンから電気に変わるなか、EVやHEVの性能を調べる試験機も増えています。EV/HEV試験機では、次の内容が確認されます。

  • 低慣性で高応答を実現しているか
  • 電子部品は正しく機能するか

タイヤ試験機

タイヤの性能を調べる試験機には、数多くの種類があります。そのうちのひとつ、ドラム式試験機では、ドラムをモータで回転させながらタイヤに接触させ、タイヤの摩耗性や耐久性を確認します。

また、クローラ式試験機も、タイヤの性能を調べる際に用いられる装置です。ドラムの代わりに平板を連結した「クローラ」と呼ばれる機構を回転させ、クローラのうえにタイヤを載せて摩耗性や耐久性を調べます。クローラ式は路面を模して試験を行うため、ドラム式より実走行に近い結果が得られるとされています。

環境系自動車用試験機

環境系自動車用試験機とは、自動車の運転が想定される環境を実験室内につくり、自動車の耐久性や燃費などを調べる装置です。主に次の要素に注目して試験を実施します。

それぞれの環境下で実施される試験内容を紹介します。

温度

低温からのエンジン始動、あるいは高温からのエンジン始動によりどのような負荷が生じるか、耐久試験を実施します。温度を調整する試験では、車体全体だけでなく部品の動作性を高温下で確認することもあります。とりわけEV/HEVの試験では、高温下の部品の動作性に注目した試験が行われることが一般的です。

また、特定の温度下での燃費試験も実施します。日本では2018年から「WLTCモード」と呼ばれるグローバル基準で燃費計測が行われるようになり、一定の温度に管理された実験室内で、高負荷な状態で急ブレーキをかける試験を行っています。

圧力

高地を想定した低圧環境下で、自動車の性能や排ガス評価を行う試験もあります。実験室内に高度4,000mを想定した低圧環境をつくり、自動車の性能や排ガスの成分に変化が生じるか確認します。

空気抵抗

完成した自動車を使い、空気抵抗についての試験も実施します。定速走行中あるいは加速・減速で走行するときの空気抵抗を調べ、車体に適切な風洞を開ける際のデータとして活用します。

また、空気抵抗を調べる際には、空力騒音も調べることが多いです。空力騒音とは風切り音のことで、微小な音を正確に判断するためにも、音が反響しない無響音室を用いて試験を行います。

蒸発ガス

走行時や給油時、駐車時にガソリンが蒸発して気体となった蒸発ガスが排出されることがあります。蒸発ガスは公害の原因にもなるため、排出規制の対象です。正確に測定するために、シールドルームが用いられます。

法令・規格確認用自動車用試験機

自動車を製品として販売する前に、EURO5排ガス規制などの各種法令を遵守しているか、安全規格に準拠しているか確認しておくことが必要です。法令・規格に合致した製品かを確認するために、以下のような試験機も用いられます。

  • 排出ガス量試験機
  • 前照灯試験機
  • かじ取り装置試験機

自動車用試験機のメリット

自動車用試験機を用いることには、次のメリットがあります。

それぞれのメリットを説明します。

自動車の性能を確認できる

自動車用試験機は、そもそも自動車の性能を確認するものです。試験機を用いて実験室内で調べることで、設計どおりの性能を有するか明らかになります。また、企画や設計・開発段階ではわからなかった課題が見つかることもあります。

自動車の安全性を確認できる

自動車の安全性も、実験室内で調べられます。安全性も性能と同様、設計や開発段階では正確に把握できないため、自動車用試験機を用いた試験が欠かせません。

自動車の環境への影響を確認できる

自動車用試験機を用いることで、自動車から排出される蒸発ガスなどの有害物質を調べられます。環境を守るためにも、環境に与える影響を知っておくことが必要です。

また、環境への影響を客観的なデータとしてまとめることで、企業としての信頼性を高められます。社会の一員としての責任を果たすためにも、環境に与える影響を公開することは必要です。

実験室内での試験が可能になる

自動車用試験機は、実験室内での試験を想定して開発されたものが多いです。実験室内で試験を行うことで、試験中の事故が回避しやすくなり、安全性を確保しやすくなります。

また、実験室では、高地や高温多湿地域などの環境を再現できます。低圧や高温、低温などの特殊な環境で自動車の試験を行い、安全性や性能を確認することで、世界のさまざまな地域への輸出が可能になる点もメリットです。

活用事例

全天候型試験ラボを活用し課題解決

自動車1台が入るスペースをもつ全天候型試験ラボでは、自動車にセンサーなどの部品を搭載した状態で評価試験ができます。これにより、条件にあった地域に移動することなく屋内で計画的に試験が行えるため、開発期間の短縮に貢献します。雨だけでなく、着雪や降雪など雪の再現、霧の再現、太陽光の再現、など単体だけでなく気象条件の組み合わせによる複合試験や、雨から霧、みぞれから雪といった自然環境の変化も再現可能です。

飛石試験による耐久試験

タイヤで巻き上げられた砂や自動車の走行中に跳ねた石やなどを模擬することができる試験機を用いることで、バンパー、バックミラー、車外センサー、塗膜、ランプハウジング、電気メッキ製品、ブレーキチューブ、カメラレンズなどの耐久性を評価可能です。JASO M104(日本自動車技術会規格)、ISO 20567-1 Test Method B、SAE J400(アメリカ自動車技術会規格 )の他、各自動車メーカー規格試験に対応しています。

ボディー外回りに装着される自動車用センサー部品の評価に塩泥水サイクル試験機

ボディー外回りに装着される自動車用センサー部品には、さらされる環境因子として「路面からの水跳ね雨水」「路面凍結防止剤に含まれる塩化ナトリウム」などが想定されますが、それらに対しては、塩泥水サイクル試験機の利用が有効です。被評価物を塩泥水槽に浸したあと、高温槽で急激な湿度・温度ストレスを与えられるため、通常の環境試験器では実現できないショックや、市場環境をより意識した耐久試験を実施できます。

質問集

車載カメラの耐環境試験は、どのようなものがありますか?

飛石試験、耐薬品性・酸性雨試験、耐洗車摩耗試験、振動試験、IP試験(耐水、耐塵)、温湿度(熱衝撃を含む)、塩水・泥水試験、気圧試験、腐食ガス試験などがあります。それぞれ様々な規格があり、それらに対応した試験機があります。

LV124規格とは何ですか?

LV124規格とは、ドイツ自動車メーカーが制定した電子機器・電装品に対する試験規格のことです。電気試験(22項目)であるPart Iと、環境試験(28項目)であるPart IIから構成されていて、日本で行っている試験には含まれていなかったり、違う方法で試験しなければならなかったりします。コンサルティングから受託試験まで、ワンストップで対応してくれる会社があるため、活用すると良いでしょう。

タイヤ単体の試験がしたいのですが、どうしたらいいですか?

各種タイヤ単体における転がり抵抗を正確に測定可能なシステムがあります。WLTC、JC08などのモード運転による走行毎のタイヤの損失抵抗や転がり抵抗係数を同時に計測できるほか、過渡モード試験、定加減速試験、台上惰行試験が可能です。なお、タイヤの走行騒音や振動の測定解析、温度変化によるタイヤ損失の影響などもオプションで検証できます。

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