HALT(Highly Accelerated Limit Test)では、被試験物に対して仕様を超える振動ストレスや温度を印加して破壊限界・稼動限界を見極め、機器に潜んでいる故障要因を早期に発見します。さらに、短期間で信頼性を向上させるべく故障要因の改善を行います。いわゆる規格に基づいて合否を判定する試験とは異なります。高価な装置のため受託試験がお勧めです。
促進試験機
促進試験機とは、品質の劣化を調べる促進試験に用いる機器のことです。促進試験は促進劣化試験とも呼ばれ、在庫や使用が長くなりそうな素材や製品の耐久性などを調べるために実施されます。
促進試験機ではどのようなことを調べるのか、また、必要性や種類について解説します。促進試験機を実施するメリットや事例、よくある質問なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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促進試験機とは
促進試験機とは、促進試験に用いる機器のことです。促進試験とは、主に品質劣化を促進させ、短時間で評価する試験を指します。たとえば屋外に長期間放置することで、素材や製品は劣化します。しかし、どの程度劣化するのかを知るためには、数年、数十年の年月が必要です。
促進試験機を用いることで、わずかな時間で長期間放置したのと同等の劣化を実現できるようになります。その結果から、素材や製品などの試料の耐久年数を割り出せるだけでなく、保管時の注意点も明らかにすることが可能です。
促進試験機に求められる条件
促進試験機は、短時間で試料を劣化させるための機器です。試料となる素材や製品が劣化したときの状況を正確に割り出すためには、次の3つの条件を満たしていることが求められます。
促進性
促進性とは短時間で劣化した状態にすることです。たとえば試料の10年後、20年後を再現する場合、促進試験機で数年かかるのでは実用性は低いと考えられます。早期に素材や製品の品質管理にかかわる情報を割り出し、市場に供給するためにも、促進試験機には実際の時間経過よりも数十倍、数百倍のスピードで時間経過できる能力が求められます。
たとえば、温度に関する試験では「温度が10℃上昇すると劣化の速度が2倍になる」というアレニウスのモデルを用いて劣化試験をおこなうことが少なくありません。アレニウスのモデルでは、通常20℃で保管する製品を30℃の環境で保管すると、10年後の劣化状況をわずか5年間で実現できます。
また、40℃の環境で保管すれば2×2=4倍のスピードで劣化が進み、50℃の環境で保管すれば2×2×2=8倍のスピードで劣化が進むため、より早く劣化による変化を分析できます。ただし、理論的には温度を高めれば高めるほど早く劣化が進みますが、素材が変質することもあるため、極端に温度を上昇させると劣化を正確に分析できません。素材の温度耐性も考慮したうえで、促進試験を実施することが必要です。
再現性
再現性とは、試験を繰り返し実施しても同じ結果が得られることです。
促進試験は、主に素材や製品の品質管理にかかわる情報を分析するために実施されます。試験ごとに異なる結果を得られるのでは、素材・製品のユーザーに正確な情報を提供できません。信頼性の高い試験を実施するためにも、促進試験機には高度な再現性が求められます
相関性
相関性とは、試験結果が実際の劣化状態を反映していることです。たとえば促進試験機により試料の2年後の状態をつくり出したとしても、実際に試料を2年間放置した状態と異なるのでは相関性が低く、試験自体の信頼性は低いと考えられます。
ただし、相関性が高いことを示すためには、促進試験機による劣化と自然放置による劣化を比較できる状態にしておかなくてはいけません。つまり、促進試験と並行して試料の放置実験もおこなう必要があり、促進試験機による時間短縮は見込みにくくなります。
促進試験機の種類
促進試験機を使うことで、時間経過によるダメージを短時間で再現できるようになります。促進試験機は、素材や製品にダメージを与える要素によって次のような種類があります。
それぞれの種類について見ていきましょう。
耐候性試験機(ウェザーメーター)
促進試験機といえば、耐候性試験機(ウェザーメーター)を指すことが一般的です。屋外に素材や製品を放置することで、日光や熱、水などのさまざまな要素から影響を受けます。耐候性試験機は、素材や製品を劣化させる要素を特定し、その要素を集中的に浴びせることで早期に劣化を実現します。
紫外線耐候性試験機
紫外線耐候性試験機とは、紫外線を発するランプを使い、長期間紫外線に暴露された状態をつくる耐候性試験機のことです。蛍光灯を用いることが多いため、紫外線蛍光灯耐候性試験機と呼ばれることもあります。一般的な蛍光灯では紫外線だけでなく赤外線も含まれますが、紫外線耐候性試験機に内蔵されたランプは、ほぼ紫外線だけを発する仕組みとなっています。
キセノン耐候性試験機
キセノン耐候性試験機とは、希ガスのひとつ、キセノンを放電させることで、試料を早期劣化させる耐候性試験機です。ガスが基底状態に戻るときに発光する光が太陽光と近似しているため、再現性が高いことが特徴です。ただし、メタリンや紫外線を用いる場合と比べると、促進性が低く、長期間の劣化を調べるためには相応の時間がかかります。
メタリン耐候性試験機
メタリン耐候性試験機とは、水銀と他の金属のハロゲン化物を含む蒸気のなかでアーク放電させることで早期劣化を実現する耐候性試験機です。HIDランプと呼ばれる高圧放電灯を用い、強力な紫外線の放射を実現するため、促進性が非常に高いことが特徴です。
塵埃試験機(耐塵試験機)
微小なホコリによっても素材・製品はダメージを受けます。とりわけ屋外で使用する自動車部品などは、塵埃によるダメージを測定しておくことが必要です。
気流試験機
気流試験機とは、塵埃を対象となる試料に強制的に吹き付け、早期劣化を図る試験機です。なお、人工的に吹き付ける塵埃は、粒子の大きさや形状により、けい砂・タルク・関東ローム・フライアッシュ・混合ダストなどの種類に分けられます。
浮遊試験機
浮遊試験機とは、塵埃を自然な形で試料に降り積もらせる試験機です。実験室の床面に塵埃を置き、人工的に風を送ることで塵埃を拡散させる手法が取られます。
塩水噴霧試験機
塩水噴霧試験機とは、塩水を人工的に試料に吹き付けることで早期劣化を促す試験機です。沿岸部における素材・製品の変化を知るためには、塩水によるダメージを測定しておくことが必要です。
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促進試験機のメリット
促進試験機を使用することには、次のメリットがあります。
短時間で劣化の状況を理解できる
促進試験機を使うことで、通常であれば10年、20年かかる劣化を短時間で実現できます。劣化状況を短時間で理解できることで、開発のスピードが上がり、より高品質の製品をより短期間で製品化できるようになります。
開発から発売までの時間を短縮できる
素材や製品を市場に出すためには、単に設計どおりに開発するだけでなく、耐久性や安全性を確かめておくことが求められます。時間経過によるダメージについても同様です。発売までに調べておくことで、管理方法や耐久年数などをユーザに正確に伝えられるようになります。
促進試験機を使うことで、発売までに調べておきたい劣化状況を短時間で実現することが可能です。適切な管理方法や推定される耐久年数を具体的にユーザに伝えられるため、不具合によるユーザの被害を抑え、企業に対する信頼性の向上も期待できます。
特殊な状況を再現・試験できる
促進試験機には、実際の劣化と同様の変化を実現する相関性が求められます。しかし、あえて通常では起こりえない特殊な状況をつくりだすことで、意図しない使用による変化や耐性を確認することも可能です。たとえば砂漠や高度3,000mを超える高山地帯、深海などの状況も実験室的に再現・試験できます。
活用事例
- ALTで潜在故障を早期に発見
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- 耐候性試験で太陽光、熱、水による材料の変化を短時間で確認
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屋外に設置するものは太陽光、熱、水(雨)によって表面などが劣化します。促進耐候性試験を実施することによって材料の変化が短時間で確認できます。太陽光には、紫外線、可視光線、赤外線が含まれているため、どのような光(波長)を放出する光源を採用している試験機なのか確認して選択すると良いでしょう。
- 複合促進試験装置でコンクリートの評価
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コンクリートは塩害や中性化、凍害などの要因で劣化することがわかっていますが、これらを複合的に与える(促進する)ことができる試験機を活用すると、短時間で評価できます。複合的とは、塩水噴霧-気中凍結-乾燥(+CO2濃度制御)の組み合わせ(条件)が設定できるということです。
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質問集
- 促進試験とは何ですか?
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促進試験とは何年かかけて劣化(腐食)する製品の信頼性を、過酷な環境におくことで実際より短時間で確認する加速試験のことです。太陽光や温度・湿度、雨(塩水)などを現実的ではない量に設定し、数週間~数ヵ月の試験期間で数年後の劣化(腐食)状態を想定します。
- 耐候性とは何ですか?
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塗料やフィルム、プラスチックといった工業製品が、太陽光・温度・湿度・雨等の屋外の自然環境に耐えうる性質のことです。太陽光による粉化や変色、温度変化による材料の伸縮・膨張、雨による加水分解・浸食、昼夜の温度差による結露などの影響が考えられます。
- 塩水噴霧試験とは何ですか?
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塩水噴霧試験とは金属製部品や金属材料、塗装・めっきといった被膜加工をした製品に対して、一般に濃度5%の塩水を噴霧して腐食試験を行うことです。ISOやJISなどの規格によって定められた雰囲気環境を槽内に再現する試験装置を使って試験を行います。