3Dプリンタ

3Dプリンタ

3Dプリンタは、3次元モデルから直接造形でき、製品や部品の製造を大きく変える存在として注目を集めています。本ページでは3Dプリンタとは何か、種類、メリット、活用事例、よくある質問などわかりやすくご紹介していますので製品の選定にお役立てください。

3Dプリンタとは

まずは3Dプリンタとはどのようなものなのかについて解説します。

3次元のデジタルモデルをもとに立体物を作り出す機械

3Dプリンタとは、3次元のデジタルモデルをもとに立体物を作り出す機械のことです。

「プリンタ」という言葉から印刷によって作り出すイメージがあるかもしれませんが、後述するように必ずしもプリンタと同じ技術を使っているものばかりではありません。

従来の立体物の加工技術である鋳造や鍛造、削り出しといった作り方と異なり、原料を積層していくことでものを作る点が従来と異なります。

意外と歴史が深い3Dプリンタ

3Dプリンタの歴史は意外と深く、1970年代に研究が始まったとされています。

そして、1980年に名古屋市工業研究所の日本人研究者が発明した光造形機が3Dプリンタの原型です。この頃は「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)」と呼ばれており、素早く試作をおこなうための機械として使われていました。

その後、アメリカで後述するFDM法の特許が1989年に出願され、この特許が2009年に切れたことでさまざまなメーカーが3Dプリンタの開発に取り組みはじめます。

2013年にはアメリカ大統領だったオバマ大統領が一般教書演説で3Dプリンタの可能性に触れるなど、現在では誰もが知る注目の技術といえるでしょう。

3Dプリンタの種類

一口に3Dプリンタといってもさまざまな方式があります。それぞれの特徴について解説しましょう。

熱溶解積層法(FDM法)

コンシューマ向けの製品も販売されていることから、3Dプリンタといわれて思い浮かべるのはこの方式かもしれません。

FDM(Fused Deposition Modeling)法は、ABS樹脂やポリ乳酸といった樹脂を溶解させ、細いノズルから出して積層することにより造形する方式です。

この方式は溶かした樹脂を冷却するだけなので、ほかの方法に比べて安全かつエコな方式といえるでしょう。

また、最近ではエラストマー系、カーボン系など、さまざまな材料を混合した特殊なフィラメントを利用でき、応用範囲が広がり続けています。強度もプラスチック製品と同等であり、扱いやすいです。

樹脂のカラーバリエーションが豊富であるため、カラフルな立体物を作れるのもメリット。

一方、積層の断面が目立ちやすく、なめらかな表面の実現は難しいです。また、製品によってはサポート材と呼ばれる、中空に積層する際に支えるための部品を手作業で取り除く必要があるのもデメリットといえます。

光造形法

光造形法は、紫外線で硬化する液体樹脂を使った方法です。初期のラピッドプロトタイピングもこの方式を採用していました。

この方法では薄い層を液体樹脂で作り、そこに紫外線を当てるという動作の繰り返しで立体物を作ります。

FDM法のように熱を使わないため、温度変化による材料収縮や変形が少ないのがメリットです。

また、液体樹脂の利用により断層面が目立たず、なめらかな造形ができます。透明な素材を利用すれば、なかが透けて見える立体物も作成可能です。

一方、紫外線で硬化する液体樹脂は太陽光によって硬化が進み、壊れやすくなるというデメリットがあります。

また、洗浄などの後処理に手間がかかるのもデメリットの1つです。

粉末法

粉末法は高出力のレーザー光線で粉末を焼結させたり、光硬化性樹脂で粉末を固めたりすることにより造形をおこなう方式です。

レーザー光線を使った方法はSLS(Selective Laser Sintering)とも呼ばれ、金属素材も使用できるため、強度が求められる場面でも取り扱えます。

ただ、表面がざらついた状態になり、なめらかにしづらいというデメリットが存在します。

光構成樹脂で固める方式はバインダージェッティングとも呼ばれ、樹脂の色を変えることで着色できるのがメリット。造形速度が速いのも特徴です。

一方で耐久性が低く、SLS同様表面がざらついた状態になるのがデメリットです。

シート積層法

シート積層法は薄いシート状にした素材を積層していく方式です。

層を接着するのに特殊な接着剤を使う方式と、超音波を使う方式があります。

利用できる材料が豊富なのが特徴で、プラスチック、紙、金属など、さまざまな材料を組み合わせることが可能です。

また、化学反応が必要ないため、比較的大きな立体物を造形できます。

ただ、シートを積層するという方式のため、溶かした樹脂や液体や粉末を利用する方式に比べて精度は低いのがデメリットです。

また、造形の制限もほかの方式に比べて大きいといえます。

インクジェット法

インクジェット法はその名の通り、インクジェットプリンタのヘッドを利用した方式です。

先述のバインダージェッティングもインクジェット法の一種ですし、インクの代わりに直接紫外線硬化性樹脂を使う方法もあります。

直接紫外線硬化樹脂を使う方法の場合、素材を混ぜて使えるため、必要に応じて硬度を変えることが可能です。また、色も変えられます。

インクジェット方式のプリンタが高精細な印刷が可能なように、この方法も高精度な造形が可能なのもメリットです。

一方、紫外線硬化樹脂を使うため、光造形法同様、太陽光での劣化がデメリットといえます。

3Dプリンタを使うメリット

加工機を利用するメリットを解説します。

造形に熟練の必要がない

これまでの製品加工においては、作り手の熟練が不可欠でした。人は熟練によって高精度な造形が可能である一方、熟練には時間がかかり、人手不足や技術の継承が課題といえます。

これに対して3Dプリンタの場合は3次元モデルさえ用意すれば誰でも同じ品質で造形可能です。

このため3Dプリンタの技術を持つ人を企業が募集しており、3Dプリンタの技術を持つ人の雇用統計はアメリカで過去4年間で1,843%も増加したといいます。

開発期間の短縮

従来は新しい製品やアイデアを形にしようとしても、型や治工具を作るなど長い時間が必要でした。

3Dプリンタを使えば3次元モデルからダイレクトに造形できるため、開発期間を短縮して作業を進められます。

余裕ができた開発期間を使えば多くの試作を重ねられ、よりよい製品作りへと結びつくでしょう。

コストの削減

3Dプリンタを使うことで開発期間が短縮できれば、その分のコストを節約できます。

試作を内製にすることでミスを早期に発見できたり、製造を内製化することで外注費を削減したりなど、さまざまな面でコストダウンが可能です。

また、従来の製造ではある程度の量をまとめて製造しなければならず、製品やその部品の在庫をある程度抱えざるを得ませんでした。

3Dプリンタなら必要な量を必要なだけ作れるため、在庫のコストを削減できます。

複雑な形状が造形できる

切削による造形の場合、刃が入らないような形状は造形できません。

3Dプリンタの場合、積層によって造形するという特徴から入り組んだ形でも作れる上、より複雑な形状を実現できます。

少量多品種生産への対応

従来のものづくりでは型や治工具を必要とするなど、コストを下げるにはある程度まとまった量を生産する必要がありました。

これに対して3Dプリンタは3次元モデルを用意すれば1個ごとに形状を変えることすら可能です。少量多品種の生産に対応し、さまざまなニーズを捉えられるでしょう。

また、製品の生産は従来方式であっても、治工具を3Dプリンタで作ることによりコストダウンが可能です。

商談や展示会でのアピールにつながる

商談や展示会において、単にパンフレットやイメージ図、スペックを見せるのと、立体物を見せるのとではインパクトが違います。

3Dプリンタを使えば設計中のものであっても気軽に造形できるため、顧客に対して早期にアピールすることが可能です。

また、それを通して議論が進み、より顧客の心に刺さる製品へと改善することもできるでしょう。

技術流出の防止

製品生産を他社に依頼する場合、設計図などを通して技術が外部に漏れる可能性があります。また、試作品を依頼すればより多くのノウハウが流出する可能性があるでしょう。

3Dプリンタを使って内製化すれば製品の技術を外部に持ち出す必要がなくなり、情報流出のリスクを下げられます。

活用事例

少量多品種の部品生産に

特に小型部品の少量生産には、3Dプリンタが採用され始めています。部品製造において大きな費用が発生する金型を製作する必要もなく、対象物に応じてカスタマイズするという柔軟な設計も実現できるのが特長です。材料も以前に比べ、かなりの種類に対応できるようになってきているため、あらゆる分野で活躍が期待できます。

3Dプリンターで治具製作を

治具は製品の加工や組立、検査など、各工程に欠かせない存在です。それと同時に、求められる用途や機能にそってさまざま準備され、一連の製品づくりにおいて欠かせない存在とも言えます。
治具製作において、複雑な形状でも手早く簡単に製作できる3Dプリンターを取り入れることで、切削加工をメインとする従来手法では困難だった課題が改善できたり解決できたりします。

3Dプリンターで文化財等の保存を

N3D-CADでは簡単にデータの編集ができるため穴埋めなどを修復可能です。3Dスキャナーを使い、彫刻や芸術品などの文化財をスキャンし、3D-CADの中へデータを送ります。3D-CADで修復したデータをSTL形式に変換し、3Dプリンターで造形すれば復元ができます。

質問集

3Dプリンターの選び方

3Dプリンターの選定ポイントは、利用目的によって変わります。目的は「造形方式」や「造形サイズ」、「精度」、「使える材質」などです。
造形方式は大きく分けて5つあり、「熱溶解積層方式(FDM法)」、「光造形方式(STL法)」、「インクジェット方式」、「粉末積層方式」、「粉末焼結方式(SLS法)」です。使用可能な材料が造形方式ごとに異なるほか、それぞれ特徴があるため、やりたいことをしっかりと把握してメーカーに問い合わせすると良いでしょう。

3Dプリンターはレンタルできますか?

3Dプリンターを本格導入する前に、活用イメージをつかみたい、期間限定で使用したいなどのニーズに応えるためレンタルサービスがあります。また、操作を覚えるのが大変だとか、材料が残ってしまうとかの問題を解決できる造形出力サービスもあります。

3Dプリンターで使用できる材料はどんなものがありますか?

3Dプリンターで使用できる材料はABS樹脂とPLA樹脂が最も一般的でした。最近では、耐熱・耐薬品性に強さを発揮するPP樹脂、耐候性の強いASA樹脂、エンジニアリングプラスチックのPC樹脂やナイロン樹脂などがあります。その他の材料では、熱可塑性ポリウレタンやPETG、アクリル樹脂、金属なども造形可能になっています。

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