非破壊検査装置

X線、超音波、磁気検査装置

製品や構造物の傷や欠陥は、目に見えるばかりではありません。細かすぎて目には見えないこともあれば、目に見えない内部にあることもあるでしょう。そんなときに活躍するのが非破壊検査装置です。その名の通り製品や構造物を破壊することなく検査でき、目には見えない傷や結果を見つけられます。そんな非破壊検査装置の基礎知識や、種類、メリットを解説します。

非破壊検査装置とは?

まずは非破壊検査装置がどのようなものかについてご紹介します。

内部の状態を破壊することなく検査できる装置

非破壊検査装置の特徴はその名の通り、検査対象物を破壊することなく検査できる点です。

検査対象となる製品や構造物には厚みがあり、人間の目やカメラによって直接見られない部分が存在します。また、表面にある傷であっても細かすぎると目視が難しい場合があるでしょう。

目で見られない部分であってもそこに傷や欠陥が存在すると、製品や構造物が壊れやすくなったり所望の性能を満たさなかったりするかもしれません。

しかしながら、内部に欠陥があるかどうかを目で確認するには製品や構造物を壊して確認する必要があり、元に戻せない可能性もあります。

このような場合に活躍するのが、対象物を破壊することなく内部を検査できる非破壊検査装置なのです。

非破壊検査装置が使用されている例

非破壊検査装置の応用は多種多様です。

たとえば飛行機の機体検査では、飛行に十分耐えられる強度を保持しているかどうかを検査するのに使用され、利用者の安全を守っています。

また、ビルや橋梁、トンネルや高架橋といった構造物のコンクリートのなかにある鉄骨の経年劣化を検査するのにも活用されるほか、原子力発電所内の容器や配管の検査といった非常に重要な現場でも活用中です。

身近なところでは人間の健康診断に利用されるX線撮像やCTスキャン、MRIも非破壊検査装置の一種といえます。これらの登場のおかげで、不必要に体を切り開くことなくけがや病気の検査ができるようになりました。

非破壊検査装置の種類

一口に非破壊検査装置といってもさまざまな種類が存在します。それぞれの検査の方法と特徴について解説しましょう。

超音波探傷検査装置

超音波探傷検査装置は超音波を検査対象物の表面や内部に伝搬させることで検査をおこなう装置です。

検査対象物を伝搬あるいは透過した超音波による振動を受信することで、内部欠陥や表面傷の場所および大きさを特定できます。

たとえば内部に欠陥がある場合、超音波が検査対象物底部にあたる前に反射して戻ってくるため、反射波が測定されたタイミングにより存在およびその場所が特定可能です。

超音波を利用しているため、X線を透過しない金属でも検査でき、発電設備や石油・石油化学、ガス、土木建築といった分野で活用されています。

磁粉探傷検査装置

渦流探傷装置は、交流電流を流したコイルを金属でできた検査対象に近づけたときに発生する渦電流を観測することで検査する装置です。

渦電流は検査対象の表面に欠陥や材質の不均一性があると変化します。表面だけでなく表面に近い内部欠陥を見つけることも可能です。

この検査装置はエンジンバルブやブレーキディスク、ブレーキドラム、ビール缶といった分野で利用されています。

放射線透過試験装置

放射線透過試験装置は、X線やガンマ線が物質を透過し、写真フィルムを感光させる性質を利用し、内部状態を撮影像として記録し確認するための装置です。

放射線の進行方向に対して奥行きがある内部欠陥を検出しやすかったり、必要に応じて拡大撮影が可能であったりといった特徴がある一方、放射線を利用するため利用には有資格者が必要となります。

検査対象は発電設備や石油化学といった分野など、幅広いです。

アコースティックエミッション

材料に亀裂が発生したり、亀裂が進行したりするときに発生する音によって破壊を検出する方法がアコースティックエミッションです。

たとえば木材が折れる音を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

ほかの検査方法が既存の欠陥を検査するのに対し、アコースティックエミッションは発生あるいは進行した欠陥を検査できるため、より早期に欠陥を見つけられます。

一方、すでに存在している欠陥をアコースティックエミッションによって見つけることはできません。

応用例としては圧力容器、ダム、建物、飛行機、自動車などがあります。

赤外線サーモグラフィ

赤外線サーモグラフィは、検査対象物からの赤外線放射エネルギーを検出し、その分布を画像表示するための装置です。

検査対象物を加熱した際、傷があると表面に発生するエネルギーの差ができます。このため、赤外線サーモグラフィで表示された温度分布が均一でない場合、傷があると判断できるのです。

この検査は建築物や複合材料、プラントや送電設備などに使われます。

近赤外分光光度計

近赤外分光光度計は、検査対象に近赤外線を照射し、吸光度の変化によって成分を算出する装置です。

農産物や食品などの品質管理に利用されており、食品中のアルコール、脂肪、でんぷん、水分、タンパク質などの成分分析や、食費添加物の確認試験に用いられます。

また、製薬や化学分野でも成分分析などで使われるほか、コンクリートの劣化具合を調べることも可能です。

非破壊検査装置のメリット

非破壊検査装置を導入するメリットについて解説します。

目視では発見できない欠陥を発見できる

欠陥は製品や構造物の表面だけにできるものではなく、表面であっても非常に細かい欠陥が生じる場合もあります。

このような欠陥は目視あるいはカメラによって検出するのは難しいですが、適切な非破壊検査装置を使えば発見可能です。

事故を未然に防ぐことができる

製品や構造物のなかには、事故が起こると大きな被害が起きるものがあります。たとえば原子力発電所、航空機、鉄道、橋梁、ビル、トンネルなどが挙げられるでしょう。

非破壊検査装置を使って欠陥を早期に発見することで、欠陥が原因で事故を未然に防ぐことができます。

検査のために製品や構造物を無駄にすることがない

非破壊検査装置は製品や部品をそのままの状態で検査できるため、検査の種類によっては製造ラインの一部に組み込んで検査を自動化することができます。

これにより全数検査が可能となり、製品の品質を上げることができるでしょう。

また、自動化により属人的な技術を減らせるため、労働者不足にも対応できます。人の数を減らせればコスト減につなげることも可能です。

製造技術の改良につながる

非破壊検査装置によってより多くの欠陥が見つかれば、それを防ぐための改良をおこなうことができます。

こうしたフィードバックを繰り返すことで、より欠陥の少ない製品や構造物を作れるようになるでしょう。

それにより品質が上がり、ユーザーからの評価が高まることも期待できます。

資源の効率化につながる

トンネルやビルなど、壊れると人の命に関わるような構造物の場合、内部の欠陥がわからなければ確実に安全だと思われる年数で取り壊して立て直さざるを得ません。

非破壊検査装置を使うことで傷や欠陥があるかどうかを検出し、必要に応じて補修することが可能になります。これにより構造物の耐用年数を延ばし、資源を効率的に使うことにつながるでしょう。

活用事例

X線透過装置によるワイヤボンディングの自動検査

ICチップ内部のワイヤ形状をX線撮影で検査し、ショートやワイヤボンディング配線の断線、曲がり等の不良を自動で判定可能です。X線検査ソフトとワイヤ検査ソフトの機能をそれぞれ連結することで、IC内部画像を自動検査します。この技術を活用することでIC内部で発生する不良の検査の自動化が可能です。ワイヤーボンディング後の工程(ICモールド加工等)で生じるロットアウト製品の再検査やICチップ内部の不良検査、製造ロットごとの仕上がり確認などがおこなえます。

AE信号を用いて製造工程の異常を早期検出、生産設備のメンテナンス

AEとはアコースティック・エミションのことです。AE計測では、信号検出に必要なセンサ、プリアンプ、解析用のハードウェア、ソフトウェアを組み合わせて適切な信号処理をおこなうもので、対象物や環境に適した不具合を破壊する前に検出できます。製造設備のアプリケーションとしては、ベアリング、ギア、ロボットアーム、ダイシング成形機の金型や鋳型、圧延機、輪転機などがあります。AEセンサの使用温度範囲は、-20~80℃。高温用センサでは200℃も可能です。

超音波探傷装置による電子部品、金属材料の非破壊試験

検査対象を壊すことなく、電子部品から金属材料までさまざまなアプリケーションに対して使用できます。アプリケーションとしては、貼り合わせウェハーの剥離、フリップチップのアンダーフィル内の剥離・ボイド、セラミックコンデンサの層間剥離、CSP、パワー半導体の評価、CFRP、GFRPなどのコンポジット材料のほか、電子部品内部の欠陥検査、信頼性評価、プラスチックパッケージの評価などがあげられます。ラボ向けに省スペースで研究室内に設置可能であり、また持ち運びが容易なものもあります。

質問集

X線透過装置の取り扱いには技師免許が必要ですか?

X線装置を取り扱うにはエックス線作業主任者という免許が必要です。しかし、企業が使用するX線装置は扉が閉じられた状態でなければX線が照射されない構造で装置の外側には管理区域が存在しないため、免許が不要と考えられます。その場合でも、必要な知識をもった管理責任者を配置することが望ましいでしょう。また、設置に関しては行政への届出が必要です。公立や民間によって届出先が異なるため、装置の購入先へ問い合わせてください。

塗装膜を非破壊で測定できますか?

超音波薄膜計というものがあるため、比較的安価で簡単に測定できます。また、光干渉法を利用し分光計測をおこなう膜厚計もあります。この装置は、これまでの膜厚計では不得意だった極薄膜・多層膜・カラーフィルタ・透明基板まで計測が可能です。絶対反射率を正確に求められるため、材質のもつ光学定数(n:屈折率、k:消衰係数)の解析もおこなえます。

配管内の劣化を非破壊で検査できますか?

工業用内視鏡(ビデオスコープ、工業用ビデオ内視鏡とも呼ばれる)で検査可能です。工業用内視鏡は、自動車、航空機、鉄道、船舶、エンジン検査、鋳物、油圧部品検査や電力プラント(原子力、水力、火力)の熱交チューブ検査の他、ガス管の検査や鉄道、構造物やコンクリート、壁などの隙間、裏側の検査などに幅広く使用されています。比較的短い距離(5m以内)を検査する首振りなどの機能が付いたものや、長い距離(100m以内)を検査するものがあります。

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