画像処理システム・ボード

画像処理システム・ボード

画像処理システムとは、カメラで撮影した画像データのなかから対象物の特徴や変化などを抽出して、演算や計測などを行うシステムのことです。また、画像処理ボードとは、画像処理システムを搭載した組み込みボードを指します。

画像処理システム・ボードとは何か、また、どのような要素から成り立つのかについて解説します。画像処理システムの種類、画像処理システム・ボードを利用するメリットや事例、よくある質問なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

画像処理システム・ボードとは

画像処理システムとは、カメラで撮影した画像データを画像処理装置に送り、データのなかから対象物の特徴や変化などの特定のものを抽出し、演算や計測、判定などを実施するシステムのことです。

画像処理システムは、外観検査や異物混入検査などの検査装置に用いられることがあります。また、選択するカメラによっても、画像処理の仕組みが異なります。

一方、画像処理ボードとは、画像処理機能を備えた組み込み用ボードのことです。元々搭載されているシステムだけでは画像処理の能力が十分ではないときに、画像処理ボードを組み込みます。画像処理ボードの種類やスペックにもよりますが、精細画像を高速に取り込み、特徴抽出や表面検査などを可能にします。

なお、画像処理ボードはハードウェアやソフトウェアに組み込むことを想定しているため、スタンドアロンタイプは一般的ではありません。しかし、パソコンとセットで動作させるときや、信号入力や保存などの特定の機能に限るときは、画像処理ボードのスタンドアロンタイプを使用することもあります。

画像処理システム・ボードの種類

画像処理システム・ボードは、画像処理内容によって次の種類などがあります。

それぞれの処理工程において実施する内容や利用場面を紹介します。

画像補正

カラー情報などを用いて、画像が適正な状態になるように補正する処理です。色味のムラ、位置のずれなどを正確に判断し、コントラストが低い状態でも高速かつ安定した補正を行います。また、レンズにより画像にゆがみが発生している場合には、除去も補正作業の一部として実施されます。

画像補正機能は、主にカメラ機能付きのスマートフォンやデジタルカメラなどに搭載されている機能です。少ない工程数で補正作業を実施できる専用アプリ、専用ソフトウェアなどもあります。

画像加工

画像をより良い状態にする画像補正とは異なり、画像加工は特定の意図を持って画像を本来の在り方とは異なる状態にすることです。たとえば人物写真において特定の部分の色を変える、幅を調整する、背景を変更するなど、実際にはなかった画像を創り出します。

画像加工は、専用のアプリやソフトウェアで実施することが一般的です。直感的に操作できるものや無料のものもあり、個人で利用する方もいます。

グレースケール画像への変換

次に紹介する画像認識の処理の前段階として、画像データをグレースケール画像に変換することがあります。画像を認識するときは、色情報が正確な認識を妨げることも少なくありません。情報過多となり、処理速度が低下することもあります。

そのため、検品や外観検査を実施するときは、画像データから色情報を抜き取り、グレースケール画像に変換することが一般的です。色情報のない状態にすることで、傷や柄、濃淡などを明確に表示し、正確な判断をしやすくなります。

画像認識

画像データから対象物の特徴を捉え、対象物が何かを判断します。また、対象物に傷や色違い、デザイン違いなどがあるのを瞬時に判別することも、画像認識の一部です。画像認識の技術は、主に検品や外観検査などに活かされてきました。

画像から文字情報を検出し、読み取る機能を持つ画像処理システムもあります。ほかにも、バーコードやQRコードなどのデータコードの読み取り機能、パラメータの自動学習などの機能もあります。

3D画像処理

3D画像のデータ処理や表示などに対応するシステム・ボードもあります。3D画像には多くのデータが含まれているため、自動並列演算やマルチスレッドなどの高速処理機能を搭載していることがあります。

画像処理システム・ボードのメリット

画像処理システム・ボードを利用することには、次のメリットがあります。

それぞれのメリットを具体的に説明します。

自動全数検査の実現

画像処理システムを導入することで、ライン上での自動全数検査が可能になります。従来、目視により実施していた検査をシステム化することで、属人的な誤差が生じにくくなります。

また、画像処理によっては高速検査も可能です。短時間で検査を実施して、出荷までにかかる時間を大幅に削減できることもあります。

目視による検査で見落としが発生すると、不良品が流出し、取引先だけでなく社会的な信頼性を落とすことにもなりかねません。検品工程をオートメーション化することで、信頼獲得と返品減の実現を期待できます。

なお、自動全数検査目的で画像処理システムを導入すると、まとまった初期費用が必要です。しかし、その後は電気代やメンテナンス費程度のコストで維持できるため、継続的に人件費がかかり続ける目視よりは、長期的に見れば費用削減につながります。

検査項目複雑化への対応

画像処理システムの技術は向上し、かつては不可能とされていた微細な外観不良や立体物の計測も、高性能なシステムであればライン上で検査が可能です。また、高速撮像により複数の検査項目を同時に実施でき、出荷までの時間短縮も実現します。

画像処理システムの技術の向上は、画像を採り込む段階に用いられるカメラの技術向上とも無関係ではありません。ラインスキャンカメラや高機能照明などを駆使することで、光沢面の微細な傷や汚れなども判別できるようになっており、人の目を使わずに高度な検査を実現します。

カメラ技術の向上は、立体物の検査にも影響を及ぼしています。3D対応のカメラをライン上に設置することで、立体物の実寸値を計測しつつ、表面の傷や汚れといった2次元の検査も同時に完了することが可能です。

作業精度の向上

産業用ロボットや検品装置においては、画像処理システムは「目」の役割を果たします。「目」の性能向上は、短時間かつ高精度の検査を可能にしてきました。

たとえば、従来の画像処理システムでは、作業者が手作業で対象物を座標軸に並べたり、ライン上で重なりを除去したりする必要がありました。しかし、高性能な画像処理システムを利用すれば、人の手を一切使わずに、位置がずれたものや重なっているものも検品することが可能です。

既存の産業用ロボットに高性能の画像処理システムを組み込むには、画像処理ボードが必要です。ただし、画像処理ボードはすべての産業用ロボットに対応しているわけではないため、親和性のあるボードを選ぶことが求められます。

労働環境の改善

ライン上の目視は時間が短く、機械に手が巻き込まれるなどの危険性もはらんでいました。しかし、画像処理システム・ボードを導入することで、検品における全工程を機械化できるようになります。労働環境を改善し、より働きやすく魅力ある職場へと変えることが可能です。

DXの実現

画像処理システム・ボードにより作業の自動化が実現すると、労働者の時間に余裕が生まれます。よりクリエイティブな活動に時間を取れるようになり、新たなイノベーションやビジネスモデルが創出される可能性も高まります

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することで、企業全体の業務効率が向上する点もメリットです。将来性のある企業へと成長するためにも、画像処理システムの活躍を検討すべきでしょう。

活用事例

カメラエミュレーションボードで画像処理装置の開発

カメラエミュレーションボードでは、USB3.0もしくはDisplayPortで入力される映像信号を、パラレル映像信号に変換・出力できます。録画した映像をカメラモジュールやCMOSイメージセンサーの映像のように画像処理機器などに出力できるほか、PC上のCG映像も使用可能です。これにより、先行して画像処理装置の開発がセンサー開発中や現場撮影が困難な場合でもできるようになります。フレームレート、ブランキングエリア等は、任意に設定可能です。

イメージ・レコーダーに入力された映像をイーサネットへ出力

イメージ・レコーダーに入力された映像をイーサネットより出力するために使用するボードを使用すると、最大 1280×720 / 30fps (YUV16 フォーマット時)までの 映像を有線Gigabit Ethernet を使用して伝送することができます。 カメラ映像をUSBの代わりにLAN経由でホストPCなどに転送するソリューションは、USBケーブルよりも取り回しがよいため、自動運転システム開発向けに使用されています。

映像+CAN・LiDARデータ 検証環境システムで効率良くECUを検証

このシステムは車載カメラ映像と CAN 信号、LiDAR データを完全同期してPCに収録する装置です。収録したCAN/LiDARデータと映像とは、再生システムを使うことで実機環境なしに再現可能となり、効率良くECU 等の機器の検証・デバッグ環境を構築できます。車内ネットワークデータを保存する場合、各データ間の同期が最重要ですが、独自技術により複数の映像とCAN、LiDAR情報とを完全同期した状態で収録、再生ともに可能にしています。

質問集

1つのカメラ映像を2台のPCで解析したいのですが、何かありますか?

Dual USBボードというボードを使用すると、パラレルインタフェースの映像信号をUVC(USB3.0/PC)2ポートに同時出力できます。それにより、1つのカメラ映像をPC2台で同時にアルゴリズム解析したり、画像処理前・後のデータを同時表示したりすることが可能になります。また、PCドライバにUVCを採用したことにより、Windows環境だけでなくLinux環境にも対応しています。

パラレルインタフェースの映像信号を録画したいのですが、何がありますか?

市販されているパラレルモニターボードを使用すれば、パラレルインタフェースの映像信号を表示・録画でき、UVC(USB3.0/PC)またはDisplayPort モニタに出力可能です。直接接続ができるSer/Des ボードをオプションとして多数用意しており、車載向けカメラと接続することもできます。なお電源供給は、USB3.0 コネクタ経由となります。

RAWからYUVへ変換したいのですが、何がありますか?

GEO社製 Camera Video Processor (ISP) GW5シリーズを搭載したGW5ボードを使用すると、RAW から YUV への変換や強力な歪み補正といった、GEO社の強みである画像処理が可能になります。GEO社純正ツールからの制御やFW更新も、GEO社の評価ボードとの互換性を持たせてあるため行えます。

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