組み込みコンピュータ

組み込みコンピュータとは

組み込みコンピュータとは、機械に組み込むことに特化して開発・製造されたコンピュータのことです。例えば製造工場で使用される産業用ロボットや検査装置、MRIやCTなどの医療機器、携帯電話やビルの管理などの無線基地局、電車などの券売機などのさまざまな機械にはコンピュータが組み込まれています。

これらのコンピュータは、いずれもその機械専用に開発されたものです。そのため、原則として汎用性がなく、作業内容や大きさ、形状などのいずれもが組み込み先の機械に合わせて製造されています。また、組み込みコンピュータは機械に内蔵されるため、外部のコンピュータと連携せずとも、機械本体で意図した作業を行えます。

一般的なコンピュータとの違い

コンピュータという言葉は、オフィスや家庭で使用するパソコン（パーソナルコンピュータ）を指すことが一般的です。文書作成や表計算など、オフィスで必要な作業を遂行するために使用されます。

組み込みコンピュータでは作業内容はすでに固定されていますが、一般的なコンピュータ（パソコン）は固定されていません。パソコンは元々何も入っていない箱のようなもので、必要なアプリやソフトを入れていくことでオフィスや家庭で使用できるようになります。

そのため、事務作業に特化したパソコン、オンラインゲームに特化したパソコンなど、ユーザの使い方によって自由なカスタマイズが可能です。また、メモリの増設や機能のアップグレードなども簡単に実施でき、一般のコンピュータよりも供給できる期間が長いため、汎用性が高いコンピュータといえます。

マイコン（マイクロコンピュータ）との違い

マイコン（マイクロコンピュータ）とは、家電製品などに搭載される小型のコンピュータのことです。機械に直接組み込まれるという点では、組み込みコンピュータと同じといえます。

しかし、マイコンは、機械内で部分的な制御のみを担当するコンピュータです。一方、組み込みコンピュータは機械内の複数の機能を果たすだけでなく、機械内の複数のマイコンの連携や外部装置との連携、操作する人間とのコミュニケーションも果たします。つまり、組み込みコンピュータと可動部さえあれば、機械は基本的なすべての機能を果たせます。

組み込みコンピュータの種類

組み込みコンピュータは、さまざまな場所で使用されています。主な種類としては、次のものが挙げられます。

• 製造用機械
• 検査用機械
• 乗り物
• IoT

それぞれどのような機械があるのか、また種類ごとの特徴を紹介します。

製造用機械

製造用機械とは、ものづくりに使用する機械のことです。産業用機械や産業用ロボットなどとも呼ばれ、半導体や液晶だけでなく、工作機器や検査装置、計測機器などの機械を製造する機械もあります。

製造業や社会インフラにかかわる製造用機器は、長期間安定した制御ができることが求められます。製造現場によっては24時間連続で稼働することもあるため、高い安定性や熱制御機能なども求められることが多いです。

検査用機械

検査用機械とは、製造過程の最終段階で製品や部品に問題がないか検査（検品）するための機械です。目視による検品とは異なり、内部構造やミリ単位の誤差まで瞬時に調べられます。

また、医療検査などの機械にも、組み込みコンピュータは使用されています。MRIやCTなどの大型機器だけでなく、血液や血圧などを測定する小型機器にも組み込みコンピュータは不可欠です。

乗り物

ほとんどの乗り物には、組み込みコンピュータが使用されています。例えば乗用車であれば、エンジンへの燃料供給装置や、燃料噴射の電子制御装置、ABS（アンチロック・ブレーキ・システム）などは組み込みコンピュータが不可欠です。

また、トラクション・コントロール・システムや姿勢制御システム、燃費改善のための装置なども、いずれも組み込みコンピュータにより高度な技術と安全性が両立されています。

IoT

IoT（Internet of Things：モノのインターネット）とは、インターネットが組み込まれた製品や機械のことです。遠隔操作ができるだけでなく、製品や機械の状態をリアルタイムで把握できるなどの特徴があります。

IoTを実現するのも、組み込みコンピュータです。組み込みコンピュータならではの操作性の高さも、IoTをより便利な存在に仕上げています。

組み込みコンピュータのメリット

組み込みコンピュータを利用することには、次のメリットがあります。

• 簡単に技術承継ができる
• 機器の連携が可能になる
• 操作性が高い
• 機械の開発が容易になる

それぞれのメリットについて説明します。

簡単に技術承継ができる

従来、ものづくりは技術を承継することが必要でした。熟練工のそばで仕事をしつつ、少しずつ技術を覚えて1人でものづくりができるようになるまで鍛錬します。粗方の技術は簡単に覚えられても、細部の仕上げや美しさまで完成するには長い年月がかかることが常識でした。

近年、日本の伝統産業などのものづくりにおいて、後継者不足が原因で技術承継がうまく進んでいないケースが少なくありません。数十年、数百年にわたって培ってきた技術が、途絶えてしまう危機に瀕している産業もあります。

しかし、高性能なコンピュータなら、熟練工の絶妙な操作の再現が可能です。また、コンピュータなら正確に何度でも同じ動きが可能なため、長い時間をかけて技術を習得しなくても、常にハイクオリティの製品に仕上げられます。製造用機械に組み込みコンピュータを導入することで、後継者がいなくても簡単に技術承継ができるのです。

機器の連携が可能になる

組み込みコンピュータは、複数のコンピュータの連携や他の機器との連携も可能です。機械内・外での連携が可能なため、複雑な作業も1つのパネルで操作できます。

また異なる作業を行う機器を連携することで、設計から部品出し、製造、組み立て、検品までの過程をシームレスにつなげられるようになります。ものづくりにおいて更なる生産性の向上が実現するでしょう。

組み込みコンピュータは、インターネットとも連携可能です。機械内の不具合を離れた場所のパソコンで確認したり、作業の結果を瞬時にデータ化したりすることも簡単です。より便利な生活を実現するためにも、組み込みコンピュータの存在が役立っているといえます。

操作性が高い

組み込みコンピュータが組み込まれた機械は、外部機器と連携せずに単体での使用が可能です。バッテリーも組み込めば、電源のない場所でも操作できます。

コードや接続設定なしに利用できるため、ポータブル機器の開発にも適しています。例えば、組み込みコンピュータが導入された医療機器や工業用機械なら、電源を確保しづらい現場などでもスムーズな利用が可能です。

機械の開発が容易になる

操作性の確認や新しい機能の実装などには、コンピュータとの連携が不可欠です。しかし、機械の開発には長大な時間がかかるため、装置が完成して量産することになったときに、コンピュータが廃番になってしまうことも珍しくありません。

組み込みコンピュータであれば、特定の機械専用で開発するため、量産化するときもスムーズに対応できます。機械の開発を容易に進めるためにも、専用の組み込みコンピュータは不可欠な要素といえるでしょう。

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